男性妊活の基本知識
〜健康的なカラダづくりへの取り組み〜
目次
1.男性不妊は予防できる?
「男性不妊って最近よく聞くけれど、どういう状態のこと?」「将来子どもが欲しいけれど、男性不妊は予防できる?」男性不妊という言葉は知っていても、詳しくは知らないという男性が多いのではないでしょうか。また、男性不妊について漠然とした不安があり、将来を見据えて予防していきたいと思っている方も多いでしょう。
そんな方のために、まずは男性不妊がどのような状態なのか、予防できるのかについて詳しくお伝えいたします。
そもそも男性不妊とは?
日本での不妊の定義は「健康な夫婦が避妊をしないで夫婦生活を送っているにもかかわらず、1年間妊娠しないこと」です。その中でも、男性に異常があり妊娠しない場合は「男性不妊症」となります。
不妊は女性の問題とイメージされる方もいらっしゃいますが、実は不妊の原因の約半分は男性にあるのです。また、この事実を知っていながらも「自分は大丈夫」と思う男性がほとんどで、不妊に悩んでいてもパートナーの女性だけが検査を受けたり、体質改善に取り組んだりしているケースが多いと言えます。
男性不妊は身近な問題にもかかわらず、自分ごととして捉えられていない男性が多いことから、検査を受けてはじめて「まさか自分が・・・」と驚かれることが多いのです。
将来子どもを望むのであれば、早めに検査を受けることをおすすめします。問題が早く見つかれば治療を早く開始できるため、結婚後のスムーズな妊活にもつながります。
男性不妊は予防できる場合がある
男性不妊は誰にでも起こりうる問題です。だからこそ「予防する」という意識が重要ですが、実際には男性不妊に対して予防するという考え方が浸透しておらず、検査を受けてから本格的な体質改善や治療に取り組む方が多いと言えます。
男性不妊は生活習慣と密接に関係しているため、ご自身の生活を見直すことで男性不妊を未然に防ぐことが可能です。もちろん、医療の力が必要な場合もありますが、予防によって「子どもが作れる体」をキープすることはできます。
男性不妊に対し漠然とした不安を抱えるのではなく、正しい知識を身につけ今できることに取り組んでいくことが重要です。
2.知っておきたい男性不妊の
原因について
男性不妊を予防するためにも、まずは男性不妊の原因について理解しておきましょう。
造精機能障害(精子の異常)
男性不妊の中でも、およそ80%の原因が精子の異常だと言われています。精子の数が少ない、精子の運動率が低い、精子が全くないなど、人によって症状は様々です。
また、女性は年齢を重ねることで妊娠しづらくなりますが、男性も女性と同様、加齢によって子どもができにくくなります。男性は30歳を超えると精子の数が落ちてきて、35歳を超えると精液の状態が悪くなるのです。精子の状態は年齢とともに悪くなっていくため、妊娠を望むのであれば精子の状態が良い若いほうが有利と言えます。
精路通過障害(精路の異常)
精子の通る道に問題があることを、精路通過障害と言います。精路が狭かったり、塞がっていたりと、様々な原因があります。精路の異常は先天性の原因・後天性の原因・原因不明の場合があり、症状に適した治療を受けることが重要です。
性機能障害(勃起・射精の異常)
近年増えているのが、勃起しない、射精できないなどの性機能障害です。射精には心理的・肉体的・神経的な反応が複雑に関わっていますが、そのどこかに異常が現れることで、勃起しない、射精できないといったトラブルが生じます。特に、妊活をしているカップルは、排卵日付近に性交渉をすることが多いと思いますが、そのプレッシャーから勃たなくなる、射精できなくなる方が増えているのです。
もちろん、加齢によって性欲が衰えてくることはありますが、最近では若年層でのセックスレスも目立ちます。これは、パートナーに対して家族のような感情を抱き性的対象に見られない場合や、セックスのマンネリ化などが原因と考えられます。長期間セックスをしない状態でいると、勃起力の維持が難しくなってくるため、セックスレスで悩んでいる方は早めに解決できるよう対策するほうが良いでしょう。
3.男性不妊で最多の原因は
「精子の異常」
男性不妊の原因は「精子の問題」「精子の通り道の問題」「性機能(勃起・射精)の問題」の3つとお伝えしました。その中でも最も多い原因は「精子の問題」です。
精子が全くないといった場合には、睾丸から精子を取り出し、顕微受精をするなど医療の力が必要となります。しかし、それ以外の精子の数が少ない、精子の運動率が悪いといった問題は、予防できる場合があるのです。将来子どもを望むのであれば、ご自身の健康だけでなく、精子の状態にも気を配って生活するようにしてください。
4.男性不妊になりやすい人の
特徴とは
精子の問題には先天性の原因と後天性の原因があります。先天性の原因には、性染色体の異常、発育段階で受けた影響などが挙げられます。それに対し後天性の原因には、生活習慣が深く関わっているのです。
生活習慣から見る、男性不妊になりやすい人は下記の通りです。ご自身の生活と照らし合わせてご確認ください。
喫煙する人
タバコを吸うことで、精子の運動率や精子形成に悪影響を与えることがわかっています。喫煙者と非喫煙者の精子量を比較すると、喫煙者のほうが10〜17%精子の量が少ないという研究結果が出ているのです。また、精子の形が異常になるリスクも高いと言われています。さらに、タバコを吸うことでED(勃起障害)に繋がるとも考えられているのです。
精子の運動率の低下、精子の形態異常などは、精子が卵子と受精する力を衰えさせるため、男性不妊の原因になります。受精したとしても先天性疾患や流産の危険性があるため、妊活中の男性にとって、タバコは百害あって一利なしと言えます。
飲酒する人
精子を作る精巣内には、アルコールを分解する酵素が存在しています。アルコールを摂取すると、体内で分解されるときに毒性の高いアセトアルデヒドと呼ばれる物質が発生しますが、このアセトアルデヒドが過剰に発生することで、精子を作る力を減退させるのです。
アルコールは適度であればリラックス効果や興奮効果があるため勃起力を挙げます。しかし、飲みすぎると脳の中枢神経を抑制してしまい、性的興奮が伝わりにくくなるのです。その結果、勃起障害や射精障害を引き起こすため、妊活中の飲酒はほどほどにするほうが良いでしょう。
乱れた食生活を続けている人
活発な精子を作るためにも、バランスの良い食生活は必須です。しかし、仕事の忙しさから偏った食生活になっている方も多いと言えます。
精子に悪影響を与える活性酸素を取り除くためには、抗酸化ビタミンを積極的に摂取する必要がありますが、乱れた食生活によってビタミン不足の方が多いのです。健康的な体を作るためにも、精子の質を高めるためにも、1日3食バランス良く食べることが重要と言えます。
コレステロールが不足している人
コレステロールは体にとって有害というイメージを持たれている方が多いですが、実は男性ホルモンの原料になります。体内のコレステロールが不足すると、未熟な状態の精子になってしまうのです。男性不妊で悩まれている方の中には、肉をあまり食べない、痩せすぎているなど、低コレステロールの傾向が見られる方もいらっしゃいます。
太っている人(肥満)
BMI値(肥満の程度を示す数値)が高いほど、正常な精子が少ないという研究結果があります。太ることで睾丸の温度が高くなり、精子に悪影響を及ぼすのです。また、脂肪が増えると男性ホルモンが低下し、女性ホルモンが上昇します。ホルモンバランスが乱れることで、精子所見の悪化、精子DNA損傷の上昇、ED(勃起障害)にもつながるのです。さらに、カロリー過多の食生活によって血圧が高くなったり、糖尿病になったり、中性脂肪が増えたりすることで、精子に悪い影響を与えることもわかっています。
5.男性不妊の予防方法
〜生活習慣の改善〜
男性不妊には生活習慣が大きく関わっていることをお伝えしました。また、男性不妊になりやすい人の特徴もご確認いただけたかと思います。では、どのような生活を心がければ男性不妊を予防できるのでしょうか。男性不妊を予防する生活習慣について見ていきます。
喫煙・飲酒を控える
タバコを吸うことで、精子の運動率や精子形成に悪い影響を与えます。また、精子量の減少、精子の形の異常、ED(勃起障害)につながるという研究結果もあるため、妊活中は禁煙するようにしましょう。
また、適度なアルコールは興奮を高めリラックスする効果があるため、勃起力アップにつながります。しかし、過度なアルコール摂取は精子を作る力を衰えさせ、勃起力や射精力にも悪影響を及ぼすため、お酒は飲みすぎないよう気をつけてください。
食生活を整える
体内の活性酸素が増えると、正常な細胞を傷つけてしまう場合があります。これは精子にも同じことが言えるため、健康な精子を保つためには活性酸素のダメージから精子を守る必要があるのです。そのためには、抗酸化作用※のある栄養素を摂取することが重要です。抗酸化作用のある栄養素や、その栄養素が含まれる食材をいくつかご紹介します。
※抗酸化とは、活性酸素の働きを抑えることです。
亜鉛
亜鉛には抗酸化力があり、細胞を生み出す働きを活性化させます。亜鉛が不足すると精子量の低下や精子の質の低下につながるため、積極的に摂取する必要があるのです。
亜鉛が含まれる食材:牡蠣・牛肉・納豆など
ビタミン
ビタミンの中には抗酸化作用の高いものがいくつかあるため、日頃の食生活で積極的に取り入れましょう。
ビタミンB12が含まれる食材:しじみ・のり・牛レバーなど
ビタミンCが含まれる食材:ブロッコリー・赤ピーマン・キウイなど
ビタミンEが含まれる食材:かぼちゃ・ナッツ・うなぎなど
アスタキサンチン
アスタキサンチンには、ビタミンEの500〜1,000倍の抗酸化作用があると言われています。精子を酸化ストレスから守り、精子を増やす効果が期待できます。
アスタキサンチンが含まれる食材:サケ・マス・エビ・いくらなど
抗酸化作用のある成分の他にも、男性不妊の予防に欠かせない栄養素があります。それが葉酸とタンパク質です。それぞれの栄養素の働きと、含まれる食材をご紹介します。
葉酸
葉酸は精子DNAの損傷を防ぎ、精子数を増やす働きがあります。葉酸が不足すると精子の染色体に異常が起こる可能性が高くなるというデータもあるため、妊活中は積極的に摂取しましょう。
葉酸が含まれる食材:枝豆・ほうれん草・アスパラガス・焼きのりなど
タンパク質
タンパク質は精子のもととなる栄養素です。また、タンパク質は男性ホルモン「テストステロン」の上昇が期待されます。タンパク質は疲労回復にも役立つため、健康的な体づくりに欠かせません。プロテインで摂取すれば、毎日効率よくタンパク質を取り入れられるでしょう。
タンパク質が含まれる食材:肉・魚・卵・豆類など
規則正しい生活
規則正しい生活は、精子の健康だけでなく、心身の健康にも大きな影響を与えます。食生活はもちろんですが、十分な睡眠時間を確保することも重要です。なお、精子の活動には7〜7.5時間程度の睡眠時間がベストという研究結果があります。
睡眠時間6.5時間以下の場合は、睡眠時間7〜7.5時間の人と比べて、精液量が4.6%、総精子数が25.7%低下するという研究があります。また、睡眠時間9時間以上の場合は、精液量が21.5%、総精子数が39.4%低下していたのです。睡眠時間は短すぎても長すぎても不妊のリスクが高まる可能性があるため、適正な睡眠時間になるようご自身の生活を見直してみましょう。
適度な運動
肥満は男性不妊の原因になってしまうため、適正体重をキープすることが重要です。そのためには運動が不可欠ですが、激しい運動は体が酸化して男性ホルモンを減らしてしまいます。そのため、筋トレなどの適度な運動を取り入れるようにしましょう。筋トレは男性ホルモン(テストステロン)を増やすことにつながります。特におすすめなのが下半身の筋トレです。下半身を鍛えることで睾丸に必要な栄養素が行き渡りやすくなり、男性ホルモン(テストステロン)の分泌が盛んになります。
・スクワット:10回×3セット
・エスカレーターを使用せずに階段を使用する
これらを毎日続けるだけでも、下半身の筋力アップが期待できます。
ストレス発散
ストレスは男性ホルモン(テストステロン)の分泌量を減少させるため、精子量減少や精子の運動率の低下につながります。さらに、性欲が低下するとも言われているため、日頃からストレス発散を意識することが重要です。ストレス発散方法は人によって異なるため、買い物をしたり、旅行に行ったりと、ご自身にあったストレス解消方法を探してみましょう。
サウナ・長風呂はNG
サウナには血流を良くする、リラックスや疲労回復できると様々な良い効果がありますが、妊活においてはあまり良い影響を与えません。サウナによって睾丸を温めすぎてしまい、精子の質が落ちてしまうのです。1回15分のサウナを週に2回、3ヶ月間続けることで、精液の状態が悪くなるという研究結果もあります。さらに、サウナをやめても3ヶ月では精液の状態が元に戻らず、正常になるには半年ほどかかってしまうのです。サウナ好きの男性は多いですが、妊活中には控えるほうが賢明と言えます。睾丸の温度は32〜33度がベストと言われており、温めすぎると精子には良くないため、長風呂も避けるようにしてください。
膝上にノートパソコンを置かない
ノートパソコンを膝の上において作業すると、精巣付近がパソコンの熱によって温められます。その結果、精巣機能が衰えてしまうのです。膝上でノートパソコンを1時間使うと、睾丸の温度が2.5度上がり、精子の生産が阻害される可能性があるという研究結果も出ています。パソコンを使うときは膝上に置かず、必ずデスクに置くようにしましょう。
下着はブリーフよりトランクス
睾丸を温めると精子に悪影響を及ぼすとお伝えしましたが、下着の種類にも気をつける必要があります。ハーバード公衆衛生大学院の研究チームによると、トランクスなどのゆるい下着を着用していた人は、ブリーフなどのぴったりフィットする下着を着用していた人と比べ、精液濃度が25%高いということがわかったのです。ブリーフなどのフィットする下着は、睾丸を温めたり、圧迫して血流を悪くしたりします。精子の状態を良くするためにも、下着はトランクスやボクサータイプなどの風通しの良いものを選びましょう。
禁欲しすぎは逆効果
禁欲期間が長いと精子の数は増えますが、精子の運動率が下がったり、精子DNA損傷率が高くなったりします。精子は3日程度生存すると考えられているため、それ以上の禁欲は死滅精子を増やすことにつながるのです。1〜2日程度の禁欲がベストと言われているため、妊活中は禁欲のしすぎに注意してください。
長時間の自転車は避ける
健康のために自転車に乗る人は多いと思いますが、長時間の自転車は妊活に悪影響を及ぼします。睾丸がサドルに圧迫され、血流が悪くなり、ED(勃起障害)を起こしやすいのです。また、週に3日以上サイクリングをする人はED(勃起障害)になりやすいというデータもあります。妊活中は長時間の自転車を避け、軽いサイクリング程度にとどめましょう。
育毛剤を飲んでいる場合は医師に相談を
男性型脱毛症(AGA)の治療薬である「フィナステリド」「デュタステリド」を服用している方の中には、ごく稀に性欲や勃起力が低下したり、精液所見が悪くなったりする方がいらっしゃいます。必ずしも生殖機能が低下するわけではありませんが、男性型脱毛症(AGA)の治療薬を服用中で妊活を検討している方は、医師に相談してみると良いでしょう。
6.男性不妊の予防方法
〜取り入れたいケア〜
男性不妊を予防するためには、生活習慣を見直すことが重要とお伝えしました。しかし、毎日忙しく過ごす中で、妊活だけに集中できる方はいらっしゃらないでしょう。そんな忙しい男性におすすめなのが、手軽に取り入れられる「サプリメント」です。
精子の質を高めるためには「亜鉛」「ビタミンB12」「ビタミンC」「ビタミンE」「アスタキサンチン」などの栄養素を積極的に摂取する必要があります。サプリメントにはこれらの男性不妊の予防に必要な栄養素が複数含まれているため、妊活に本気で向き合う男性のサポートが可能です。
なお、このような妊娠前からの健康的なカラダづくりのことを「プレコンセプションケア(=プレコン)」と呼び、男性にも女性にも必要なケアとして近年広まっています。
7.男性不妊は予防ケアが重要!
今日からできることを
取り入れましょう
男性不妊には生活習慣が深く関わっており、誰にでも起こりうる身近な問題です。
だからこそ、男性不妊は早めの予防ケアが重要と言えます。
まずはご自身の生活習慣を見直し、できることから改善していきましょう。
また、サプリメントなどの毎日手軽にできる妊活ケアを取り入れるのもおすすめです。
将来子どもを望まれる方は、今日からできる健康的なカラダづくり「プレコンセプションケア(=プレコン)」に取り組んでいきましょう。