男性妊活において
意識すべき状態と行動

〜何から始めたらいいかわからない男性のための〜

1.進む少子化と妊活

日本の少子化は進んでおり、2021年は約81万人にまで下がりました。少子化の理由は主に2つあり、①結婚しない人が増え性交が少なくなっていること②妊活がうまくいかない人が増加していることが考えられます。
また、国際的なダイバーシティの流れで女性も働きやすくなりましたが、出産適齢期に仕事のキャリアを積む必要があり、結婚・出産を先延ばしにしてしまう人もいます。芸能人が40歳を過ぎて出産するケースも報道されますが、40歳からの妊活は簡単ではありません。女性も男性も若いほうが妊娠しやすいのは間違いないのです。妊活スタートは早いほうがいいということを肝に銘じておいてください。

進む少子化と妊活とは

2.男性妊活に影響を与える
加齢と晩婚化

男性妊活に影響を与える加齢と晩婚化

日本では晩婚化が進み、男性の初婚年齢の平均値が32歳に近づいています。ブライダルチェックを行っていると、20代の方は30代以降の方と比べて精液の状態(精子の数・精子の運動率・精子の濃度等)がいいことがわかっています。
30歳を超えると精子の数が落ち始め、35歳を過ぎると精液の状態が悪くなるので、妊娠を望むなら精子の状態がいい若いほうが有利です。女性も35歳を超えると卵子の状態が悪くなるため、男女ともに晩婚化が進むと妊娠しづらくなってしまいます。
一方で男性の場合、高齢でもお子さんができるケースがあります。調査によるとインドの94歳の男性が子どもをつくったのが世界最高記録として知られています。日本でも男性芸能人が70代で子どもを授かったとニュースになったことがあります。しかし、こういったケースはまれだということを知っておいてください。

3.男性妊活と生活習慣(睡眠・
肥満・ストレス・喫煙・アルコール)

男性妊活と生活習慣

WHOによると、自然妊娠に必要な精液量は最低でも1.4mlと言われています。また、精液1ml中に精子が1,500万以上、そのうち活発なものが40%以上いるのが望ましいとされています。精液量が多いこと、質の良い精子(正常な精子)が精液中に多いことは、妊活をうまく進めるための重要なポイントです。
しかし、精子の質は生活習慣によって大きく左右されてしまいます。特に注意したい5つのポイントをチェックしてみましょう。

<睡眠>
一般的に、睡眠時間が7時間~7時間半ぐらいが精液量、精子数にはベストという研究結果が複数あります。しかし、働き盛りの日本人男性でそれだけ睡眠がとれている人は少なく、睡眠不足も精子が少なくなることに影響していると考えられます。

<肥満>
食生活でカロリー過多になり、血圧が高くなったり、糖尿病になったり、中性脂肪値が上がったり、太ったりする(メタボになる)ことが精子に悪いという結果が出ています。
このように生活習慣が乱れている人が社会生活で増え、メタボの因子を増やし、精液の状態の悪化を引き起こしていることも考えられます。

<ストレス>
ストレスが強いと性欲の低下やEDにつながり、性交の機会が少なくなります。
しっかり睡眠をとって食べ過ぎを控え、ストレスをためないという健康的な生活習慣ができていないと、男性妊活リスクを高めてしまうのです。

<喫煙>
喫煙は造精機能や精子の運動率に悪影響を与えることがわかっています。喫煙者は非喫煙者に比べて、精子の量が10〜17%少ないという研究結果が出ており、異常な形の精子が出現するリスクも高いといわれています。さらに、喫煙はEDの原因にもなると考えられているのです。精子の形態異常、運動率の低下などは、精子の受精能力を衰えさせるため、男性妊活がうまくいかない原因となります。さらに、受精したとしても、先天性疾患や流産の危険性が懸念されます。

<アルコール>
適度な飲酒は大丈夫ですが、過度な飲酒は精液中の酸化ストレスを上昇させることから男性妊活リスクの原因になります。

4.男性妊活においてセックスレスは大敵

男性妊活においてセックスレスは大敵

日本人はセックスレスの夫婦が多いことがわかっています。セックスレスは年々増え、2020年は50%を超えました。さらに20代で17.9%、30代で28.3%がセックスレスという数字が出ており、若い世代でもセックスレスが深刻化しています。ブライダルチェックを受ける方でも、セックスレスの方は少なくありません。付き合いが長くなってセックスがマンネリ化している、パートナーに慣れ親しみすぎて性の対象になっていないという方が10%近くいるのです。また、使っていない機能は衰えていくため、長い間セックスをしていないと勃起力は維持しづらくなります。

勃起はするのに膣内射精できない男性は多い

マスターベーション(オナニー)では射精できるのに、セックスでは射精できないという場合があります。膣内で射精できない・射精しにくいとスムーズな妊活は難しいでしょう。なお、膣内射精できない原因として、不適切なマスターベーションや心因性の原因が挙げられます。マスターベーションの方法を修正する、パートナーと一緒にカウンセリングを受けるなどして改善を試みてください。
他にも、マスターベーションでは勃起するのに、妊活のプレッシャーからパートナーにだけ勃たないといったケースもあります。セックスで勃起しない、射精できない場合は、パートナーと一緒にじっくりと向き合うことが大切です。決して一人で抱え込まず、必要であれば医療機関に相談してみるのもよいでしょう。

5.男性妊活とコロナ

男性妊活とコロナ<

「新型コロナウイルスに感染すると男性妊活リスクが高まる」というニュースがありましたが、正確なデータはなく結論は出ていません。一般的にはコロナに感染したり、感染しないように接触を避けたりすると性交の頻度が落ちます。夫婦といえども性交の機会が遠のくと、妊娠しづらくなることは想像できるでしょう。コロナが落ち着き、性交の機会が増え、出生数も増えることを期待します。。

6.夫婦ともに問題がなくとも
妊娠しないケースもある

夫婦ともに問題がなくとも妊娠しないケースもある

生殖機能にお互い何も問題がない夫婦でも、人工授精・体外受精・顕微授精を行って、うまく受精しないケースが11%あるといいます。最近では男性のDNAの損傷具合を確認する「精子DNA断片化率」の検査の重要性も指摘されています。精子の数や動きが十分でも、精子の中の遺伝情報が崩れていると受精しづらく、また、受精しても流産しやすいことがわかっています。

7.自分のカラダのコンディションを
正しく知ろう

夫婦ともに問題がなくとも妊娠しないケースもある

精液を調べたことがある男性は13 %に過ぎず、調べた方の大半は実際に妊活に悩まれています。妊活には時間がかかりますし、最近は晩婚化で妊娠に有利な年齢ではないカップルも多いです。結婚前に男性ならではのコンディションについて調べていれば、問題があっても早くケアを開始でき、結婚後のスムーズな妊娠が期待できます。
アンファーの調査では、精液を調べない理由の第1位は「自分に問題があると思わない」が38%を占めています。また、男性の妊活に対する意識調査では、3人に1人が「男性妊活といわれてもピンとこない」「根拠はないが自分の男性力は問題ないと思っている」と回答しています。多くの男性が、男性側に妊活がうまくいかない原因がある可能性を理解しながらも、実際には「自分は問題ない」と思っており、他人事ととらえています。そのため男性妊活に取り組むという考え方が根付いていないのです。

精液検査を受けない理由

男性妊活がうまくいかない原因には、上述のように生活習慣が深く関係していますが、結婚前から「妊活リスクを減らすためにケアをしよう」という意識のある男性は少ないといえます。しかし、妊活がうまくいかなくなる前に予防することが、将来の妊娠のためには大切です。
妊活がうまくいかないのは決して珍しいことではなく、どんな男性も妊活に悩む可能性があります。そのため、将来子どもを望む男性は、男性妊活に関する正しい知識を若いうちから身につけておく必要があるのです。
また、第一子を無事に授かっても、その後の生活習慣の乱れや加齢などの男性側の原因で妊活がうまくいかなくなるケースもあります。「精液を調べて問題がなかったからずっと安心」というわけではないのです。子どもを授かって幸せな家庭を築いていくために、誰もが男性妊活リスクを自分事としてとらえる必要があります。男性妊活をとりまく現状を理解し、生活習慣や体質の改善に真摯に向き合ってください。

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